きものラボラトリ 08

狩衣 【かりぎぬ・かりごろも】 と 直垂 【ひたたれ】その1

今回は、文化的そして歴史的な見地からの話題を取り上げてみようと思います。

時代劇といえば「水戸黄門」「必殺シリーズ」など武士や忍者そして、町人の生活が描かれた題材で、江戸時代を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

しかし、ここ数年大河ドラマの「鎌倉殿の13人」や「光る君へ」等平安時代、鎌倉時代、また乱世な戦国時代の「SHOGUN将軍」によって歴史的にも正確性を重視し且つ美術的なアプローチで視覚的にも楽しめる衣装が多数登場してきています。

時代考証に基づくと季節や階級による生地や色目、装飾、禁色等の決まり事があります。 ここでは回をまたぎ「狩衣」「直垂」の違いを簡単にまとめてみたいと思います。

写真や動画でもあります。練習用の衣装なので違いはありますが、参考としてそして、興味を持って頂くのを主眼としています。

狩衣

狩猟用の服装でしたが、動き易かったために公家の日常着となりました。江戸時代には直垂階級に次ぐレベルの礼服になっています。

狩衣の特徴

*袖【そで】をくくる紐。狩の時などに袖を縛って動きやすくするために袖口に紐がついています
薄平【うすひら】35歳くらいまで、厚細【あつぼそ】、左右縒【そうより】細い紐が2本並ぶ、籠括【こめくくり】中に縫い込み先だけが外に見えます。階級ではなく年齢で地味になっているようです。
*首上 高さがある丸襟
トンボとよばれる受緒【うけお】と掛緒【かけお】
*両脇が開いた仕立て
狩衣は身頃が一幅で身幅が狭いため、袖を後身頃にわずかに縫い付け、肩から前身頃にかけてあけたままの仕立て方となっています。
下着に指貫【さしぬき】 (裾口に紐を指し貫いて着用の際に裾をくくる袴)に狩衣でしたが礼服になるにつれて中着を着るようになります。 ですので、衣装ですと襦袢【じゅばん】、着物、袴、狩衣で着せます。
*石帯【せきたい】
前に下がっている部分(下画像のエプロン状のもの)
石帯とは、皮製の帯部分に飾り石を縫い付けた物で、本来彫金を施した金属製のバックルでとめていたところ平安時代末期以降前を紐で結び、背中に当てる部分と結び余り部分のみを皮で作った二部構成となりました。石帯を結んだヒモの飾りが変化していった物です。

狩衣の種類

*小直衣【このうし】通常の狩衣の裾に襴と蟻先を取り付けたもの
上皇、親王他、大臣・大将以上が着用とした。
*浄衣と半尻【じょうえ、はんじり】
浄衣は、神に奉仕する神事服です。半尻は、子供服です。
*水干【すいかん】
庶民の平常着。「菊綴」は綻び易いところを補強して縫った糸の端を房状にほぐしたものが元になっています。垂り首(Vネック)で着る場合もあります。
*褐衣【かちえ】退紅【たいこう】白張【はくちょう】
どれも貴族の下部の衣服。退紅は、ごく薄い紅染めの狩衣と黒袴。
狩衣正面
狩衣背面