メイクアップラボ#26

男優の着物姿と補正

先日、ある映画の製作発表で今旬の売り出し中の男優さんの羽織、袴を着せる機会がありました。他に、誰もが知っている名の有る若手男優さんも同じように羽織、袴姿です。

しかし、その旬の俳優さんは専属スタッフのスタイリストさんによる着付けということです。袴の丈は合っているのですが、上がってしまって短くなりそして、後ろは下がった状態です。直ぐにでも直してあげたいという衝動をぐっと堪えながら距離を取っていました。

「せっかく容姿が良いのにもったいない!」と強く思うのですが旬だから何でもアリ?だから別に気にもならない?というのが一般的な見方でしょうか。周りのスタッフも皆さん誰も気に留めていないようですが...

当日彼らの入り時間も遅くなり、スケジュール的に押してしまい着付けに取れる時間に問題があったのかもしれませんが、着付けを心得ている人であればそのポイントを抑えつつ出番までには直す事が出来る筈です。

最近はスタイリストさんが着付けもまかされる場合が多くなったようで勿論、きちっと着付けができるスタイリストさんも多くいらっしゃると思われますが「できます!」と安請け合いをしてしまう場合が少なくもないように見受けられます。

また、着付けに不安を持つスタイリストさんの中には「後で見て頂けますか?」と素直に現場でお願いされる場合もあります。そこまで気を遣っているような場合、大体は役者さんが着物に慣れていらっしゃったりして前側は役者さんご自身そして、スタイリストさんは帯等を手伝う程度で既に整っていて手直しも殆ど必要無かったりします。

着せる方にも問題がおお有りですが役者さんにも問題が有る訳で、TVや映画は多くの人が目にする訳ですから人気の役者だからどんな着方をしていても顔が良ければで帳消しと思われては、本来の日本文化は廃れていってしまいます。

時代が変れば流行も変わり、最近の浴衣や成人式のスタイルもそういった流れの一つかもしれません。あまり決まり事にうるさいと文化的にも廃れてしまう場合もあります。しかし、日本(きもの)の品格が無くなって来ているのは本当に寂しい事です。

確かにお手本となる時代劇も少なくなり「きちんと着物を着こなしているなぁ」と思える役者さんも少なくなって来ています。基本をうるさく言うベテラン俳優さんや時代考証がしっかりと持っている着付け師も少なくなってきました。

でも、きちんとした姿を見るとやはりすらっと格好は良い訳で、高価な良い着物を着ていなくてもビシッと決まっていると自然と芝居もその映像も引き締まって来るのも周知の事実です。

日本の役者なのですから、着物はきちんと着て欲しいのものです。西洋の男優がアルマーニのスーツをビシッと着こなすのと同じような感覚でしょうか。

男性の着付けのポイント

男性に着せる場合は、帯が上がらないようにお腹廻りに補正を入れてあげます。

が、細身の人は胸部分からしっかり補正をする事が重要です。また、顔が小さい人は横に広げすぎない補正をするよう気をつける必要もあります。

時にガッシリと見せたいのか肩からタオルをかけて補正する人も居るようですが、首が短く顔が埋まって見えてしまう残念な結果となる場合もあります。

必ず全体のバランスをしっかりと見た上で補正を行う事が大切です。実は、女性よりも男性の補正の方が難しいのです。

ラボ・インデクスへ