メイクアップラボ・きもの#10
着物の背後にある配慮『優しさを感じる着付け』

思いあたる事ありませんか?
今回は、着せ方。きものを装う側ではなく、着せて差し上げる側の話題です。
テレビ、映画や舞台などを業とする衣装さんは男性が非常に多いですね。昨今では歌舞伎の衣装さんにも女性がいらっしゃいますが、私の師匠はやはり男性でした。そして、ほとんどの作品が男性のチーフの元での仕事でした。
男性であってもモデルさんや女優さん、日本舞踊でも踊り手さんの女性にも着せます。衣装は重たくボテ(衣装ケース)が重いという理由もありますが、今まで当たり前のように全く疑問もなく仕事をしてきました。しかし、私が最近一般の方向け着付け教室、ワークショップやセミナーに伺って気がついた事があります。
着物のシワを取ろうと着物に触り過ぎたり、お相手の身体を触り過ぎていませんか?
プロの衣装さんはこれらが必要最小限になります。身体に触れる事が少ないのです。意識してそうなった訳でもないのでしょうけど、技術としても触ることが少ない触る必要が無い訳です。
一般的に胸や腹部など他人にベタベタと触られるのは不快なものです。また、早変わりのある着付けやお祭り、映画でエキストラなど多くの役者さんを着せるような場合など、早く着せるには触りすぎないこともポイントになります。
絹物の場合、生地が伸びたり弱くなったりするので、なるべくアイロンは使いません。畳む時などに手でシワを伸ばしながら畳むのを「手アイロン」と言いますが、着付け教室で着物を着せる際に襟などに「手アイロンをしましょう」という教え方もあるようです。
私もやってしまいがちですが、補正の綿を入れる際どうしても平に馴染ませたくて手で胸のあたりやお尻を触ってしまいます。できるだけ注意するようにしていますが、生徒さんでも既にクセになっていて必要もないのに何度も撫で付ける仕草をする方がいます。この動作、男性にされたら嫌ですよね。着付けの方が男性女性に限らず触る動作が多いというのは単純にそれだけ時間がかかるということです。このクセを治せば時短にもなり更に、お相手の精神的負担も軽減できます。
シワなく綺麗に着せる事も大切ですが、拘り過ぎて手数が多くなりすぎるのや、必要以上に近づきすぎても気になるものです。着せる時の体制が綺麗でスマートに見えた方が相手にもそして、周りにも好印象を与えますよね。
着物を気持ちよく自然に着て頂くためにも細かい点を少し見直してみてはいかがでしょうか?